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【人事評価改革】人事評価×キャリアデザインで実現する「育つ組織」の作り方

投稿記事【人事制度】

2025.12.17

「人事評価に納得感がない」「評価が社員の成長につながっていない」――
このような課題を感じている中小企業の経営者・人事担当者は少なくありません。人事評価制度は導入しているものの、評価が単なる査定や処遇決定にとどまり、社員のモチベーションや定着率向上に結びついていないケースも多いのが実情です。その背景には、人事評価とキャリアデザインが切り離されているという大きな問題があります。本記事では、「人事評価×キャリアデザイン」という視点から、社員が主体的に成長し続ける“育つ組織”をつくるための考え方と実践ポイントを解説します。評価を変えれば、人は変わり、組織は確実に変わります。今こそ、人事評価の本来の役割を見直してみませんか。

1.人事評価を取り巻く現状と課題

1-1 従来型人事評価が抱える限界

多くの中小企業で導入されている従来型の人事評価制度は、年功序列や職能評価をベースにしたものが中心です。この仕組みは、組織が安定成長していた時代には一定の効果を発揮してきましたが、環境変化が激しい現在においては限界が顕在化しています。特に問題となるのが、評価基準の曖昧さです。「頑張っている」「期待に応えている」といった抽象的な表現が多く、評価者による主観や好き嫌いが入りやすくなります。また、評価が過去の成果や失敗の確認に終始しがちで、「次にどのような行動や成長を期待しているのか」が十分に伝えられません。その結果、社員は評価を成長の指針として活用できず、無難な行動に終始するようになります。これでは、人事評価が本来持つ「組織と人を成長させる仕組み」としての機能を果たしているとは言えません。

1-2 「評価される側」が感じている本音と違和感

評価を受ける社員の立場に立つと、人事評価に対する不満や違和感は想像以上に根深いものがあります。「評価結果の理由がよく分からない」「評価は給与や賞与を決めるためだけのものになっている」と感じている社員は少なくありません。特に近年は、働く目的や価値観が多様化しており、単に処遇が決まるだけの評価では納得感を得にくくなっています。また、評価と自分のキャリアデザインが結びついていない場合、「この会社で成長できるのか」「将来どんな役割を担えるのか」が見えず、不安を抱えたまま働くことになります。この状態が続くと、評価に対する関心そのものが薄れ、指示待ち姿勢やモチベーション低下につながります。人事評価に対するこうした本音を放置すると、優秀な人材ほど組織を離れていくリスクが高まるのです。

2.キャリアデザインの重要性とは

2-1 なぜ今、キャリアデザインが注目されているのか

近年、キャリアデザインが注目されている背景には、働き方や雇用環境の大きな変化があります。終身雇用や年功序列が当たり前ではなくなり、社員は「会社がキャリアを用意してくれる存在」ではなく、「自らキャリアを考え、選択する存在」へと変わってきました。特に中小企業では、人材の定着や育成が経営課題となっており、社員一人ひとりが将来像を描けないまま働いている状態は大きなリスクになります。キャリアデザインを支援することで、社員は自分の成長と会社の方向性を結びつけて考えられるようになります。これは単なる福利厚生ではなく、社員のエンゲージメントを高め、主体的な行動を促す重要な経営施策です。そのため今、多くの企業が人事評価とキャリアデザインを連動させる取り組みに注目しているのです。

2-2 キャリアデザインが社員の行動を変える理由

キャリアデザインが明確になると、社員の行動には大きな変化が生まれます。なぜなら、日々の仕事が「やらされている業務」ではなく、「将来の自分につながる経験」として認識されるようになるからです。例えば、人事評価で指摘された課題も、単なるマイナス評価ではなく、「次のステップに進むために必要な成長テーマ」として受け止めやすくなります。その結果、社員は評価を避ける対象ではなく、活用する対象として捉えるようになります。また、自身のキャリアビジョンを持つ社員は、指示待ちではなく、自ら考えて行動する傾向が強まります。こうした主体的な行動の積み重ねが、組織全体の活性化につながります。キャリアデザインは、社員の意識と行動を変える強力なスイッチなのです。

3.人事評価とキャリアデザインを結びつける意味

3-1 人事評価を「管理」から「成長支援」に変える視点

人事評価はこれまで、社員を管理し、処遇を決定するための仕組みとして運用されてきました。しかしこの考え方だけでは、社員の成長意欲や主体性を引き出すことはできません。これからの人事評価に求められるのは、「できた・できなかった」を判断する管理の視点ではなく、「どうすれば成長できるか」を支援する視点です。評価を成長支援に変えるためには、結果だけでなくプロセスや挑戦を評価に取り入れることが重要になります。また、評価面談を一方的な通知の場ではなく、対話を通じてキャリアをすり合わせる場として位置づけることも欠かせません。人事評価がキャリアデザインと結びついたとき、評価は社員を縛るものではなく、成長を後押しするツールへと変わっていきます。

3-2 評価とキャリアが連動したときに起きる組織変化

人事評価とキャリアデザインが連動すると、組織にはさまざまな前向きな変化が生まれます。まず、社員が評価を「会社から与えられるもの」ではなく、「自分の成長を確認する機会」として捉えるようになります。その結果、評価結果に対する納得感が高まり、改善に向けた行動が生まれやすくなります。また、キャリアの方向性が共有されることで、上司と部下のコミュニケーションも質的に変化します。短期的な成果だけでなく、中長期的な成長を前提とした会話が増え、育成意識が組織全体に浸透していきます。こうした積み重ねにより、挑戦を歓迎する風土が生まれ、「育つ組織」へと変化していくのです。

4.育つ組織をつくる人事評価設計のポイント

4-1 キャリア視点を取り入れた評価基準の考え方

育つ組織をつくるためには、人事評価の基準そのものにキャリア視点を取り入れることが欠かせません。従来の評価基準は、業務遂行度や成果達成度に偏りがちでしたが、それだけでは社員の将来像を支えることはできません。重要なのは、「この評価項目は、どのような成長につながるのか」という視点を明確にすることです。例えば、専門スキルだけでなく、課題発見力や周囲を巻き込む力といった将来の役割拡大につながる要素を評価項目に組み込むことで、社員は評価を通じて自らのキャリアを意識するようになります。また、等級や役割ごとに期待される成長レベルを示すことで、次に目指す姿が明確になります。キャリア視点を取り入れた評価基準は、社員の行動を未来志向へと導く羅針盤の役割を果たします。

4-2 面談・フィードバックを成長機会に変える工夫

人事評価を成長につなげるうえで、評価面談やフィードバックの質は極めて重要です。評価結果を一方的に伝えるだけの面談では、社員の納得感や成長意欲は高まりません。大切なのは、評価を起点に「これからどう成長していくか」を一緒に考える対話の場にすることです。そのためには、過去の行動を振り返るだけでなく、今後挑戦してほしい役割や身につけてほしいスキルを具体的に伝えることが求められます。また、上司が一方的に話すのではなく、社員自身にキャリアの希望や不安を語ってもらうことも重要です。こうした双方向の面談を重ねることで、評価は単なる査定ではなく、社員の成長を支援する実践的な仕組みへと進化していきます。

5.人事評価改革の実践例と成功のヒント

5-1 キャリアデザイン連動型人事評価の導入事例

キャリアデザインと連動した人事評価を導入し、成果を上げている企業では、評価制度を「育成の仕組み」として再定義しています。例えばある中小企業では、評価面談の中で必ず「3年後にどんな役割を担いたいか」「そのために今年取り組むべきテーマは何か」を話し合うプロセスを組み込みました。評価結果は昇給や賞与だけでなく、次に挑戦する業務や研修内容にも反映されるため、社員は評価を前向きに捉えるようになりました。その結果、指示待ちだった社員が自ら改善提案を行うなど、行動変容が見られるようになったのです。このように、人事評価をキャリアデザインと結びつけることで、社員の意識と行動が変わり、組織全体の成長につながっていきます。

5-2 失敗を防ぐために押さえておきたい注意点

一方で、人事評価改革は進め方を誤ると形骸化してしまうリスクもあります。よくある失敗例の一つが、制度だけを先行して導入し、運用や対話が追いつかないケースです。評価シートを刷新しても、上司がキャリア面談を十分に行えなければ、社員は変化を実感できません。また、評価とキャリアを結びつけると言いながら、処遇への反映が不透明なままでは、かえって不信感を招く恐れもあります。重要なのは、小さく始めて運用を改善し続ける姿勢です。評価者への研修やフォローを行い、対話の質を高めることが成功の鍵となります。制度は目的ではなく、育つ組織をつくるための手段であることを忘れてはいけません。

まとめ

人事評価×キャリアデザインで「育つ組織」を実現するために

人事評価を単なる査定や処遇決定の仕組みとして捉えている限り、社員の成長や組織の活性化にはつながりにくいのが現実です。本記事で見てきたように、これからの人事評価には、社員一人ひとりのキャリアデザインと結びつき、「成長を支援する仕組み」として機能することが求められています。キャリアの方向性が明確になることで、社員は評価を前向きに受け止め、自ら考えて行動するようになります。その積み重ねが、挑戦を歓迎し、人が育つ組織文化を生み出します。人事評価改革は一朝一夕には進みませんが、小さな対話と改善を重ねることで、確実に組織は変わっていきます。人事評価とキャリアデザインを連動させ、「育つ組織」づくりへの第一歩を踏み出してみてください。

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